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岡本健志(おかもと・たけし)
NTTドコモ イノベーション統括部
企業連携担当課長

2004年ドコモ入社。R&Dにて、IP化対応の無線ネットワーク制御装置の新規開発・全国導入に従事した後、4G(LTE)の国際標準化を担当。2011年より経営企画部で東日本大震災の対応や事業戦略の策定などを担当。2年間のMBA留学の後、イノベーション統括部へ。事業プロジェクトをゼロから立ち上げ、ビジネスパートナーとともに2016年にdocomoスマートパーキングシステムを発表。都心を中心とした駐車場不足を解消するために、現在普及に向けた実証実験を行っている。(所属部署・役職は取材当時)

近い未来、自動運転社会がいよいよ到来しようとしている。
一方で、自動車だけがオートメーション化されても、道路や周辺インフラが旧来のままでは、その実現にはさまざまな障壁が立ちはだかる。いま、自動車業界を越えたさまざまな企業・機関が、来たるべき未来社会に向けて、目に見えない変革を起こしはじめている。

この度、ドコモのネットワークとIoTセンサー技術を融合させることによって生まれた「docomoスマートパーキングシステム」は、まさしく自動運転時代の幕開けに一石を投じるものとなるだろう。駐車スペースにIoTセンサーを設置するだけで、スマートフォンから駐車場の予約、クレジットカードでの自動決済まで可能にするこのシステムは、駐車場をはじめ、車を取り巻くインフラのあり方に革命を起こす存在となるかもしれない。

NTTドコモ イノベーション統括部 企業連携担当の岡本健志に話を聞いた。

空き駐車場をスマートフォンで検索・予約

—「docomoスマートパーキングシステム」とは、
どんなサービスなのでしょうか。

ひと言で言えば、「ドライバーがより快適にカーライフをエンジョイできる、新たな駐車場サービス」です。都内を運転していると駐車場探しに一苦労されたことがあると思いますが、この「docomoスマートパーキングシステム」を使えば、スマートフォンから空き駐車場を検索・予約し、さらに駐車料金の精算もクレジットカードで自動決済できるようになります。

— 従来の駐車場との大きな違いはどこにあるのでしょうか。

一つ目は、徹底してユーザーエクスペリエンスを考慮したこと。これまでカーナビ上で駐車場を検索することはできても、その空き状況までは実際に現地へ行ってみないとわかりませんでした。「docomoスマートパーキングシステム」では、駐車場にIoTセンサーを取り付けるだけで、リアルタイムに空き状況を検索し、予約までできるようになります。また、「精算機で支払うまで実際にかかった駐車料金がわからない」というユーザーの声にも応え、スマートフォンで料金をリアルタイムに把握することもできます。

二つ目は、駐車場事業者にとっても非常に低コストで導入・運営できるシステムであること。通常、駐車場を運営するには、精算機やフラップ板などの大掛かりな設置工事が必要です。加えて、精算機の料金回収や釣銭補充、領収証の用紙付替えを行ったり、フラップ板を定期的にメンテナンスしたりと、メンテナンスコストがかなり高くつくものでした。しかし、このシステムを使えば、日々の運営がすべてオンライン上で管理できるため、現地での作業がかなり軽減されます。

このシステムを使えば、さらに都内に駐車場が増えそうですね。

はい、イニシャルコストとランニングコストが従来よりかからない分、駐車場運営の参入障壁が一気に下がると考えています。たとえばこれまで採算が合わない小規模な土地や、ビル建て替えの際の更地の期間だけでも、駐車場を開設・運用できます。ドライバーにとっては停められる場所が増えるし、土地オーナーにとっても隙間の所有地を有効活用できるので、お互いにメリットがあるのです。

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駐車場にIoTセンサーを取り付けるだけで、
ドコモのネットワークによって、
リアルタイムで空き状況を検索することが可能になりました。

— このシステムを考案したきっかけはどこにあったのでしょうか。

私自身、日頃からよく車を運転しているのと、実家が駐車場を運営しているのを見てきた経験があるんです。ドライバーの要望と、土地・駐車場オーナーの苦労や課題の両方を知っていたことが大きかったと思いますね。

普及に向けたメリットと未来の展望

— ネットワークにつながるという点において、具体的なメカニズムを
教えていただけますか。

「docomoスマートパーキングシステム」には、「スマートパーキングセンサー」「ゲートウェイ」「入出庫管理サーバー」という3つの構成要素があります。従来の駐車場設備は有線ありきで、工事期間と費用を要するものでしたが、「スマートパーキングセンサー」は電源も通信も有線レスで駆動します。そして、クルマの入出庫をリアルタイムに感知します。

「ゲートウェイ」は、消費電力の軽減をめざして、駐車場全体のセンサーの通信を集約して、入出庫データをサーバーに送信します。同時に、センサーが正常動作しているかのヘルスチェック機能も搭載していて、故障や盗難が発生した際にリモートで把握できるようになっています。

最後に「入出庫管理サーバー」は、「ゲートウェイ」から集約された入出庫情報を管理するクラウド上のサーバーのことで、これを介して、他の駐車場事業者のサーバーとも連携することが可能になります。

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— センサー1台で駐車場になるというスマートさが魅力の一方、
不正駐車の抑止についてはどうお考えですか?

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統計上、99%のユーザーは、フラップ板のある駐車場を正しく利用していることがわかっています。特に平日日中の駐車場などは法人企業が使うことも多く、不正駐車をするとは考えにくい。そう考えると、フラップ板というのは、不正駐車をする1%のユーザーを抑止するためのシステムなのです。では考え方を変えて、99%の優良ユーザーにフォーカスしたサービス設計をしてみようと考えたわけです。
ただ、性善説だけではもちろん成り立たないので、駐車場ビジネスの保守運用の経験を持つプレステージ・インターナショナルさんと組むことにしたのです。同社は問題発生時の駆け付けからコールセンター、機器設置など、あらゆることを手がけられているので、すでにノウハウを持っています。つまり、お互いの強みを組み合わせることで、不正防止の仕組みをシステム全体として構築しています。

— 今回開発されたセンサーは、小型でスマートなだけでなく、かわいらしい
デザインになっていますね。

ユーザーインタビューを行った結果、ドライバーは駐車場にネガティブな印象を持っていることがわかりました。この印象を何とかしてポジティブに転換できないだろうか。発想を変えれば、駐車場は「愛車を休ませる憩いの場」にもなり得ると考えました。またセンサーは従来目立たせないのが常でした。しかし「docomoスマートパーキングシステム」ではあえてセンサーを目印にしようと考え、ユカイ工学さんにもご協力いただきながら、機器開発からデザイン設計まで行いました。こうしたフレンドリーなルックスにすることで、駐車場という存在をポジティブに変えたいと思っています。

— 今後このシステムはどんな段階を経て普及していくと思いますか。
また、自動運転社会とつながるビジョンなどはあるのでしょうか。

当然、日本全国の駐車場にこれが導入されることにはならないと思います。スマートフォンをお持ちでないドライバーやクレジットカード利用に抵抗を感じる方もいらっしゃるので、すべてのドライバーに受け入れられるシステムではありません。私たちがめざすのは、既存のコインパーキングシステムに取って代わるものではなく、それらを補完するシステムの普及なのです。

また、今後自動運転が発展していけば、渋滞問題の解消など、さまざまな交通事情が変化していくと思います。しかし、自動運転の技術だけが実現しても、モビリティを取り巻くインフラやシステムが合わせて進化しなければ、私たちが思い描く理想の未来は成立しません。「docomoスマートパーキングシステム」は、来たるべき自動運転社会においても、ネットワークとつながることで駐車場を効率よく見つけ、出入庫の管理もスマートに行なえるという利点を持っています。未来を見据えたシステムの実現に向けて、これからが勝負だと思っています。

nomabar02Illustration by Noma Bar (Agent Hamyak)

— そのような理想の未来を実現するためには何が必要でしょうか?

既存の駐車場事業者とどれだけパートナーシップ(協創関係)を結べるかが肝要です。このシステムを、駐車場事業者にとってもメリットを感じていただけるよう提案していくことが不可欠です。ビジネスモデルを組むときに最も意識したのは「餅は餅屋」ということです。アイデアを創出した会社がすべて請け負うのではなく、それぞれのノウハウを持つ事業者と「協創」していくことが非常に大事ですね。

このように、さまざまな企業と協業することで、既にビジネスを行っている企業、新しく参画する企業、それぞれバランスが取れた形で、自動運転社会に貢献していけると考えています。

今回、さまざまなパートナー企業と取組むことで生まれた「docomoスマートパーキングシステム」。はじめはドコモの新たな挑戦として始まったものだが、それは駐車場と人とクルマの新しい関係や、未来のカーライフのビジョンに基づくイノベーションでもあった。ドコモが培ってきた通信インフラの力を活用して、まったく異分野の業界と連携することで、この社会に新たなイノベーションを創出することのできる可能性を示唆していると言えるだろう。

写真=植村忠透 Photos : Tadayuki Uemura
インタビュー=塚田有那 Interview : Arina Tsukada
文=高岡謙太郎 Text : Kentaro Takaoka

“docomoスマートパーキングシステム”

2016年6月6日、NTTドコモが発表した「docomoスマートパーキングシステム」は、都心を中心とした駐車場不足を解消する目的で開発された、将来的には自動運転とのコラボレーションも見据えたシステム。ユーザーは、スマートフォンからスマートパーキングシステムに登録された駐車場の空き情報を検索。駐車場内に設置されたセンサーによってリアルタイムに入出庫の状況が管理サーバーに送られ、そこから自動的に精算が行われる仕組み。文字通り「スマート」なシステムの駐車場が、今秋から都内を中心に稼働をスタートする。
参照: 報道発表資料