2018年2月22日、23日の2日間、NTT武蔵野研究開発センタにおいて「デジタル技術が彩る未来へ」をコンセプトに、「NTT R&Dフォーラム2018」が開催された。

年に一度開催される同フォーラムでは、テクノロジーがもたらす未来の姿を垣間見ることができる。今回は、「未来予測」を可能とするテクノロジーに焦点を当てる。

未来の需要を予測する「AIタクシー®」

ドコモは人工知能を活用したリアルタイム移動需要予測技術で、未来のタクシー乗車需要を予測するサービス「AIタクシー®」を、2018年2月15日より法人企業向けに日本全国で提供を開始している。NTT R&Dフォーラム2018でも、AIタクシーの展示ブースが出ていた。

image2

AIタクシーは、タクシーの乗車需要を10分ごとに予測する。運行データや気象データ、周辺施設データなどの多様なデータに加えて、モバイル空間統計のリアルタイム版を活用。日本各地の性別や年齢層など、属性ごとの人数分布の移動による変化をリアルタイムに把握し、人工知能で分析することで、タクシーの需要がありそうなエリアの特徴を読み取る。

AIタクシーの実証実験では、興味深い結果が得られたという。成人の日に式典が開催されているタイミングで、多くの若者たちが同じ場所にいることは自明でも、終了時間が訪れてすぐに解散するわけではない。これまではタクシーの需要を推測するのは難しかったが、AIタクシーは、人の動きのデータを取得しているため、同じ場所に留まっていた人々の動き出しを検知し、需要に応えることが可能となったそうだ。

image3

AIタクシーブースの展示説明員は、AIタクシーと従来のタクシー運転手の違いについて、このようにコメントしている。

「AIタクシーは、人間のタクシー運転手が経験則で判断していることと同じことを行っています。過去のデータから学習して予測モデルを作り、予測モデルと目の前で起きているさまざまなデータをかけ合わせて結果を出しています。人間の運転手と異なるのは、データであれば複数人が経験したデータから分析ができる点、遠く離れた場所のデータも取得できるため、同時に広いエリアでの需要把握ができる点です」

AIタクシーは、経験豊かな運転手が行っていた予測を、経験の浅い運転手も同じように、より広い範囲で予測可能にする技術だ。AIタクシーを使うことで、運転手一人当りの売上が伸びたという結果も出ているという。

今後の交通事情を大きく変化させうるリアルタイム移動需要予測は、人工知能技術と、「モバイル空間統計®」のリアルタイム版によって支えられている。

モバイル空間統計®の高速化により、リアルタイムに直近までの人数分布を把握

携帯電話ネットワークの仕組みを利用し、個人のプライバシーを保護した形で形成された統計データが、モバイル空間統計®だ。

モバイル空間統計では、『どの年齢層がどれくらいいるのか』『特定の場所に集まる人は男性・女性どちらが多いか』『どのように移動しているか』など、データを通してさまざまな人々の動きを可視化・分析できる。

モバイル空間統計のデータを活用すれば、「時間ごとに変化する東京エリアの人口」をグラフ化する、といったことも可能となる。

AIタクシーにとって要となるのが、このモバイル空間統計のリアルタイム版だ。これまで過去のデータを提供していた「モバイル空間統計」に関して、ドコモのR&D部門において統計処理の高速化を進めることにより、直近までの人口統計の時系列データをリアルタイムに取得できるようになった。

この250m~500mメッシュ単位のリアルタイムな人口統計を用いることで、人数分布の変化を把握できることが、リアルタイムの移動需要予測を高精度で実施できるキーポイントとなっている。

image1

移動需要予測の実現によって解決される課題たち

ドコモとNTTサービスエボリューション研究所は「近未来人数予測™」として、この「人の移動予測」に取組んでいる。近未来人数予測では、人工知能技術として「corevo®」のひとつである時空間変数オンライン予測技術を活用している。

時空間変数オンライン予測技術では、人数分布の時系列データから時間と空間の影響パターンを学習する。あるエリアにおける過去の人の増減が、周辺エリアの人数の変動にどのような影響を及ぼしているかを学習し、数時間先の人数を10分毎に予測する。

周辺を含めた各エリアにおける直近の人数分布の変動を逐次学習し続けながら予測することから、オンライン予測という言葉が付与されている。これにより普段とは異なる人数分布の変動に対しても予測できる可能性を高めている。

人の移動予測が可能になることで解決する課題はさまざまだ。たとえば、観光地の混雑緩和。インバウンドの盛り上がりもあり、人気の観光地はどこも人で溢れている。移動予測ができれば、観光客に比較的空いている場所をすすめることで人の分散をはかれる。他にも、災害発生時の人数把握も可能になる。災害が発生した際にどこにどれくらい人がいたのかが把握できていれば、その後の救助活動などが実施しやすくなる。

「大規模イベントの警備計画も効率化できると考えています。これまで警備計画は過去のイベントの状況を参考に立案されていました。ですが、実際に立てた計画通りになることは稀です。近未来予測ができれば、より緻密な警備計画と効率的な警備実行が可能になると考えられます」

と展示説明員は近未来人数予測の可能性について語った。

AIタクシーも近未来人数予測を構成する技術を活用している。近未来の移動需要予測の精度が上がっていけば、さまざまな課題が解決され、新たなビジネスチャンスが到来する。AIタクシーをはじめとする、未来の人の移動の把握がもたらす可能性に注目していきたい。

「AIタクシー」「モバイル空間統計」「近未来人数予測」は、株式会社NTTドコモの商標または登録商標です。

「corevo」は日本電信電話株式会社の登録商標です。(http://www.ntt.co.jp/corevo/)

Photos : Tadayuki Uemura
Text:Junya Mori