人は先史時代から「スポーツ」を行っていたと言われている。時代とともに新たなスポーツが発明され、人々を熱狂させてきた。

テクノロジーは、新たなスポーツも誕生させる。世界的なムーブメントとして広がりを見せるスポーツエンターテイメント「eスポーツ」も、新たなスポーツの1つだ。

2018年3月31日、「eスポーツ」をテーマとしたゲームイベント『DIG INTO GOOD GAMES(以下、DIGG)』のローンチパーティが豊洲PITとMIFA Football Parkにて開催された。今回は、そのイベントから感じたeスポーツの可能性をお伝えする。

電脳のスポーツ競技「eスポーツ」の盛り上がり

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eスポーツは、“エレクトロニック・スポーツ”の略称だ。格闘ゲームやサッカーゲーム、シューティングゲームなどを競技として、世界中でさまざまな大会が開かれている。

eスポーツの競技人口は全世界で1億人以上とも言われ、オリンピック種目としての採用を目指す動きも始まるなど、世界的に注目を集めている”競技”だ。

欧米では、1990年代後半から高額な賞金がかけられた世界規模の大会も開催され、年収1億円を超えるプロゲーマーも登場している。

近年発売されるゲームでは対戦性やとチーム性が重視されるなど、「eスポーツ」の競技として成立させることを想定した傾向が見られる。

スポーツとして成立させるためには、プロが登場するだけでは足りない。重要なのは、観客の存在だ。2017年の調査では、eスポーツは世界中で3億8,500万以上の視聴者がいるとされる。

ライブ配信サービスのユーザー数や、サービスへの訪問者数が成長している様子を見ていると、配信を通じたeスポーツの観客数の成長も期待される。

eスポーツは「観戦」体験が重要になる

観客数のポテンシャルはある。eスポーツが競技として成立するためには、観客が楽しめるかどうかを考えなければならない。

スポーツを楽しむためにはルールを知る必要がある。新しいゲームソフトが次々と登場し、ゲームごとにルールのあるeスポーツは、従来のスポーツ競技以上に、観戦体験への配慮が重要になる。

観戦前に観客が知っておかなければならないことが多くなるほど、観戦のハードルは上がる。また、画面上で何が起きているかがわかりやすくなければ、観戦を楽しむことは難しい。

DIGGの会場で提供されていたアプリは、eスポーツを盛り上げるためには必須と言える観戦体験の対応に挑戦するものだった。

新しいスポーツには、新しい観戦スタイルの発明が必要

DIGGのメインイベントステージでは、来場者がプロプレイヤーに挑戦するエキシビションマッチや、一般参加者とゲストタレント、トッププレイヤーによる即席チーム戦などが催された。

ステージの様子を視聴するために、DIGGで提供されたのがライブ視聴・AR機能をはじめとしたさまざまな機能を体験できる視聴体験アプリ「DIG GAMES」だ。

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同アプリには、スマホをステージにかざすとバーチャル情報が付与される「Live ARモード」と、複数のストリーミング映像を切り替えながら視聴できる「Multi viewモード」の2つの機能が搭載されていた。「DIG GAMES」の開発を担当した瀬崎隆明は、アプリを開発した狙いについてこう語る。

「eスポーツは操作するプレイヤーとゲームの画面、最低でも2つの画が必要です。実況者も含めると映すべき画が多い。ゲームを知っている観客はゲーム画面のみでいいかもしれませんが、まだあまり詳しくない人は実況者の画面も映したほうがいい。人によって必要な情報の種類や量が異なります。その多様なニーズに対応するために観戦体験を拡張するアプリを開発しました」

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元々、eスポーツ領域で何かできないかと可能性を探るなかで、今回の視聴側の体験を拡張するアプリのアイデアが生まれた。eスポーツは、観客の体験が重要である一方で、既存の映像では表現に限界がある。

ARやマルチビューといった機能を用いることで、離れた場所にいる観客にわかりやすい映像を届け、現場でも観戦を楽しめるようにする技術の開発に取組んだ。だが、今回のアプリ開発は序章に過ぎないという。

「離れていても一緒にプレイできるオンラインゲームの人気は上昇しています。ゲームの配信サービスも盛り上がっており、ゲーム実況のようなコンテンツが大人気です。この先、この領域には投げ銭も含めて、ゲームの見せ方におけるビジネスチャンスはさまざまです。今回はこの領域における第一弾のチャレンジです」

「DIG GAMES」の開発を担当した瀬崎隆明

「DIG GAMES」の開発を担当した瀬崎隆明

eスポーツは今後、さらに発展していくだろう。その発展に、次世代通信技術5Gが与える影響は無視できない。

ゲーム配信を楽しむユーザーが増えているとはいえ、遅延などが発生しては観客も興ざめする。安定して配信するための通信インフラも競技が成長していくためには重要だ。

「ミリ単位の駆け引きが勝敗を分けるオンラインゲームには、低遅延であることが求められます。5Gが登場することで、新しいゲームが開発され、より魅力的なゲームが登場するでしょう。また、5Gは視聴側にも変化をもたらします。大容量での通信が可能になることで、より豊かな映像表現を届けることが可能になっていくはずです」

DIGGの会場内には、さまざまなゲームコーナーが設置され、PCゲーム、スマホゲーム、据え置き型ゲーム機など、さまざまな端末でのゲーム体験や対戦が行われていた。これだけ多数の端末をつなぐためにも、5Gの技術は活躍するはずだ。

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より多くの人にエンターテイメント体験を届ける

eスポーツは、腕や指先などを使う競技種目が大半を占め、身体障害者など体が不自由な人でも選手として参加可能だ。また、年齢を問わずプレイできることから、リハビリなどを通じて福祉や医療での利用も期待されている。

より多くの人が楽しむことができるスポーツになる可能性も、eスポーツは秘めている。さらにプレイの様子は遠く離れた場所にも届く。これまで以上に多くの人に、エンターテイメント体験をもたらす可能性がある競技なのだ。

Photo: Tadayuki Uemura
Text: Junya Mori