私たちの生活や体験をアップデートしてくれるだろうと期待の集まる第5世代移動通信システム「5G」。世界中の通信事業者や世界主要ベンダーが5Gに取組み、5Gを活用した新たなサービスやアプリケーションなどのユースケースが生まれ始めている。

現時点で、5Gはどこまで進歩してきているのだろうか。数ある5Gの活用が期待される分野の中でも、人々の興味が注がれているのはエンタテインメント領域だ。AIやロボティクス等の技術発展により、将来的に「労働」の時間が減っていくと考えられる中で、余暇を充実させてくれるエンタテインメントの価値は相対的に高まっていくはずだ。

5Gがエンタテインメント領域にもたらす新たな可能性に触れるイベントが、2017年12月8日~10日に“5G新体感エンタテインメント”をテーマに東京スカイツリーで開催された。

「5G」がもたらす次世代のエンタテインメント体験

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2017年5月からドコモは「5Gトライアルサイト」を東京スカイツリーでスタート。実証実験を行ってきた。

イベント当日は、スポーツやエンタテインメントの未来を体験できる展示が行われ、会場に集まった人々が、5Gが持つ「高速・大容量」「低遅延」「多数端末接続」という3つの特徴を体感していた。

今回のイベントでお披露目されたのは、エンタテインメントの中でも「スポーツ」と「ゲーム」における新たな取組みだ。その他にも発表された新体感をもたらす技術たちと共に、順を追って紹介していきたい。

5G×スポーツ|未来のスポーツ観戦「多視点スイッチング」

2017年11月29日に渋谷で太田雄貴氏(2015年フェンシング世界選手権金メダリスト)と、ベアトリーチェ・マリア・ヴィオ選手(車いすフェンシング世界ランキング1位)による車いすフェンシングのエキシビジョンマッチが行われた。

会場にはさまざまなアングルでカメラが設置され、観客は目の前で行われている試合を観戦しながら、手元のタッチパネルを操作することで、カメラがとらえた映像を自由にスイッチングしながら観戦した。

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この実証実験は、ドコモやNTTの最先端テクノロジーを活用し、これまでにない高臨場感や新体験を伴うエンタテインメントの提供に挑戦するプロジェクト「FUTURE-EXPERIMENT」の第二弾。「視点を拡張せよ」というテーマどおり、従来の観戦者が見ることができなかった視点から試合観戦を可能にしている。

本イベントでは、来場者はこのエキシビションマッチのアーカイブ記録映像とともに、多視点スイッチングによる新たなスポーツ観戦を体験していた。

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将来的には、試合会場の複数のカメラが撮影する映像を低遅延で伝送し、その場にいなくても自由に視点を切り替えながら、まるで試合会場にいるかのような体験が可能になり、スポーツ観戦がさらに楽しいものになるはずだ。

5G×GAME|VR空間におけるゲームの多人数同時プレイ

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©2016 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/SAO MOVIE Project ©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

ゲームのブースに移動すると、ドコモとバンダイナムコエンターテインメント社の共同プロジェクト「ソードアート・オンライン レプリケーション」のキャラクターが登場する。「ソードアート・オンライン」といえば、フルダイブ型VRのMMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインRPG)が舞台となる作品だ。

ここには同作品の世界を再現したVRゲームをプレイできるコーナーが設置されていた。5Gを利用してストリーミング配信した360度スペシャルプレイ映像をモバイルVRであるGearVRを利用して体験する。

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©2016 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/SAO MOVIE Project ©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

手を振り下ろす動作に合わせてメニューアイコンが表示されるなど、アニメと同様の動きも再現されており、ファンにとってはそれだけでも笑みが溢れる。

今回、体験できたゲームで驚かされたのは、ゲーム内で他のプレイヤーが操作するキャラクターを視認でき、さらには音声でコミュニケーションも可能だったことだ。

同時に4人が参加し、コミュニケーションをしながらプレイできた

同時に4人が参加し、コミュニケーションをしながらプレイできた

©2016 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/SAO MOVIE Project ©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

複数人で同時にプレイできるという点も、MMORPGという元の作品の設定に忠実だ。大規模というだけの人数でのプレイはまだできないが、「低遅延」の特徴を生かし、他のプレイヤーの動きや発言をリアルタイムに体感できるようにしているのは5Gだ。

サーバーが4人の情報を吸い上げ、同期をして各プレイヤーのゲームの世界を作り出す部分の通信を5Gで実現しているという。将来的にはハードやサーバー、モバイルVRなどがよりリッチになった時代において、離れた場所にいるプレイヤーたちによるマルチプレイが可能になるのでは、と担当者は語っていた。

今回は同じ場所からのアクセスだったが、離れた場所からリアルタイムに同じVR空間でゲームをプレイすることができるようになれば、まさにアニメの世界が実現する。その時は、ゲームをプレイするだけでなく、遠隔地から他者がプレイしている様子を観戦することも可能になる。今後e-Sportsの普及にも影響を及ぼすかもしれない。

5Gはコミュニケーションの常識も変える

その他のブースでは、ドコモが現在取り組んでいる5Gの実証実験事例を展示していた。「TALK」をテーマに掲げたブースでは、画面には映っている女性が、目の前の空間にはいないという光景が広がっていた。
画面に映っている男性の隣には女性が映っているが実際にはいない

この女性はイベント会場から少し離れた浅草駅から中継していたが、5Gを用いて映像を伝送することで遅延を感じることもなく、リアルタイムにコミュニケーションをとることができていた。

撮影に協力してもらった担当の方曰く、Hololensのようなデバイスを使うことでディスプレイの中ではなく、その場に女性がいるかのように浮かび上がらせることもできるという。

遅延もなく、目の前に立体的に人が投影されていたら、遠隔地にいる人とのコミュニケーションの仕方も変化しそうだ。

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高い周波数は電波が飛びにくいと言われていたが、スカイツリーでの実証実験によって環境がよければこれまでの基地局と同じカバレッジが確保できるという成果が出てきているそうだ。この結果から、都市部以外にも5Gを広げるシナリオもできてきているという。

都市部においても、ビルの陰に入ったら通信状況はどうなるのかなど、まだ実験しなければならないことはあるが、着実に5Gの普及に向けた動きは進んでいることが伺えた。

5Gが普及すれば、「高速・大容量」「低遅延」「多数端末接続」といった特徴を活かして、さまざまなエンタテインメント体験が塗り替えられるだろう。今回のイベントで体験した「スポーツ」や「ゲーム」の体験はその一端に過ぎない。

Photos : Tadayuki Uemura
Movie EDIT: Toshimasa Mihara
Text : Junya Mori