社会の変革をサポートする「B2B2X」モデル

本フォーラムの基調講演では、日本電信電話株式会社 代表取締役社長 鵜浦博夫がNTTグループ全体で進めている「B2B2X」モデルについての説明を行った。B2B2Xは、ビジネスの持続的な成長に向け、他分野の事業者や自治体とのコラボレーションを通じ、高付加価値サービスを創出していくことをめざす新たなビジネスモデルだ。

社会に新たなサービスが生まれていくために、NTTグループは”センターB”と呼ばれるB2B2Xの中心に位置するサービス提供者を支援し、ビジネスモデルの変革をサポートしている。NTTグループが提供できる価値はさまざまであり、AI、IoT、セキュリティ、ビッグデータなどが挙げられる。

今回のフォーラムでもイベント会場にはさまざまな企業との取組みを伝えるパネルが並び、NTTが積極的に外部とのコラボレーションを実施していることを示していた。

「グループ内では私たちは黒衣であり、触媒であると話をしています。NTTグループは、さまざまなパートナーとコラボレーションしながら多様な価値を創造し、新しいエコシステムを生み出してきました。これから先は、私たちが直接サービスを提供していくのではなく、パートナーと共により付加価値の高いサービスを届けていくために、ビジネスモデルの変革に取組んでいきます」

「センターBのサービス提供者のビジネスが成長することの先に、そのビジネスを支えるNTTの成長がある」−−鵜浦は基調講演でそう語った。

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ICTを提供することにより、さまざまな領域で変革を支援

B2B2Xモデルでの取組みはすでにスタートしている。さまざまなパートナー企業との連携も行われており、展示会場では取組みが進んでいる企業の事例が多く紹介されていた。

たとえば、農業も重点分野の1つとして位置づけているNTTがクボタと展開している連携の事例が紹介されていた。クボタのソリューションをICTで支援しており、農機や営農支援システムの高度化、水・環境インフラの遠隔監視や現地作業の効率化につながる研究開発に取組んでいる。

NTTが札幌市や福岡市など自治体と進めている包括連携に関してのパネルも展示されていた。NTTは観光、スポーツ、産業振興、防災等を中心に、地域における社会課題の解決に共に取組み始めている。たとえば、インバウンドを中心とした国籍別行動傾向の可視化・プロモーションや、訪日外国人を対象としたWi-Fi環境整備の促進などが行われている。

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この他、パネルが展示されていた中には、Jリーグ、DAZNと連携してJ1クラブのホームスタジアムをはじめとした全国のスタジアムのWi-Fi環境整備や情報サービス提供などを含めたICT化事業「スマートスタジアム」を推進している事例など、さまざまな事例が展示されていた。

鵜浦の基調講演内では、ファナック、松竹、ツール・ド・フランスとの連携事例が共有された。

ファナックとは製造を最適化するための「FIELD system」の早期実現とデファクトスタンダード化をめざした取組みを行っている。松竹やドワンゴとは歌舞伎と最新のICT技術をコラボレーションさせた新しい歌舞伎体験に取組んでおり、その成果は2016年4月に開催された「ニコニコ超会議2016」内で上演された「超歌舞伎 supported by NTT」にてお披露目された。

ツール・ド・フランスとの連携事例では、NTTグループのディメンションデータが通信機能を持ったGPS内臓デバイスを全選手のサドル下に設置。レース中、継続的にデータを収集し、GPSによる選手の位置情報などのデータがリアルタイムで視聴者へ提供された。

鵜浦は「スポーツにICTを導入することでトレーニングの方法も変わっていく可能性が高い」と講演内でコメント。スポーツとテクノロジーを融合させることへの期待を語った。

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いかに社会にイノベーションを生み出していくか

B2B2Xモデルを推進していくためにはサービス利用者であるXを定義することが重要だと、鵜浦は語る。

「自動運転を例にとって、Xを地方の高齢者や障がいをお持ちの方々だと定義してみましょう。Xの人々は自動運転車をどういった流れで利用するのでしょうか?サービス利用者であるXをサポートするために、たとえば音声入力など多様なユーザーインターフェースが必要になり、ノイズの中で人の声を聞き取る技術も必要になってきます。方言を聞き分ける力も必要になるでしょう」

Xのカスタマージャーニーを想定し、Xに合った体験を提供していくためには何が必要になるかを考えることで、必要な技術も見えてくる。

「ユーザーの利用頻度やコストによって、ビジネスモデルも変化し得ます。シェアリングエコノミーのモデルも視野に入れる必要があるでしょう。Xにどのような価値を提供するかを考え、ふさわしいセンターBを考慮すると、地方自治体、タクシー会社、公共交通機関が積極的に関与すべきでは、と考えられます。その際、自動車メーカーやNTTはサービス提供者になるのではなく、センターBが新しいサービスを提供するためのサポートを行う形がビジネスモデルとしては正しいかもしれません。」

鵜浦は平成28年1月に閣議決定された第5期科学技術基本計画に登場する「超スマート社会」を引き合いに出しながら、AI、ビッグデータ、IoTといった技術を用い、官民が連携してあらゆる社会課題が解決されていくことへの期待を語った。

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超スマート社会を実現していくためには、データを囲い込まず、社会全体で共有していくことや、個人データの取扱いに関するテクノロジーが進んでいく必要がある。解決されるべき課題は多いが、だからこそR&Dが重要な役割を担う時代となっていると言えるだろう。

NTTがB2B2Xモデルを推進し、さまざまなプレイヤーとコラボレーションしながらICTを用いて社会課題を解決していく先に、超スマート社会の輪郭が見えてくる。NTTが開発しているAI、IoT、通信、ビッグデータ、セキュリティ等の技術は、その核となるはずだ。

写真=植村忠透 Photos : Tadayuki Uemura
文=モリジュンヤ Text : Junya Mori