スマートフォン × VRで読み解く最新技術

— 現時点で、VRの技術を使ってやっていきたいことのビジョンや、
ロードマップとしては、どのようなものがありますか?

ドコモとしては、通信のインフラを最大限に活用したサービスを実現していきたいというのが根底にあります。スマートフォンになる前の携帯電話はインフラとサービスが密にくっついていて、キャリア各社の色が見えていた。スマートフォンになって端末はあくまでプラットフォームであって、アプリやサービスを作っている人たちの色が出てきています。

VRはいろいろな最新技術で成り立っていますが、スマートフォンを使ったVRの場合はスマートフォンに搭載されている技術を活用しています。例えばレンズで拡大してもきれいに見える高精細な液晶、頭の動きに追従するためのジャイロや加速度センサー、など、スマートフォン本来の使われ方以上に使っているため、負荷がかかっている。360°のパノラマ映像を送るためには大容量の通信回線が必要になる。

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つまり、総合的な技術力が問われてくるので、ドコモが、コンテンツ、インフラ、使いやすいユーザーインターフェースなどトータルで設計して提供するところが差別化のポイントになるのではないか、と段々と思ってきています。そういう意味ではキャリアにとってやりがいのあるサービスかもしれません。
もちろん、現状、通信速度、デバイスの処理能力、熱暴走など解決していかなければならない課題もたくさんあります。それを乗り越え、たくさんの人に提供されるスマートフォンをいかに活用していくか?を総合的に考えていくことが重要になっていくのではないかと思います。

VRが当たり前になる時代——その課題と可能性

— VRの進化は、先進のテクノロジーを使っていることがわからないくらい
身近に馴染んでいるスマートフォンのおかげでもあるのでしょうか?

通信速度もそうですが、高精細なパノラマ映像をリアルタイムでデコードできるCPUが搭載されていたり、液晶がフルHDを超えて4Kのものは、近くで見てもピクセルが見えない。
このスマートフォンを作った企業は、これに使われるとは思われていなかったでしょうが、VRの業界にとってはありがとうという感じですよね(笑)
スマートフォン以外でも、撮影では、360°の画像は、6台程度のカメラでさまざまな角度で同時に撮って継ぎ目がわからないように「スティッチング」するのですが、リアルタイムで1秒間に30フレームスティッチングできる技術があったり、いろいろな最新技術が使われています。

— VRや、現在の通信インフラ、デバイスは、ここから
どう変化していくと考えるのがよいのでしょうか。

進化のプロセス、たとえば通信速度なども段階的に進んでいって、それはVRだけでなくいろいろなサービスからの要求でそうなり、そこに追従していくのですが、逆に、要求されるさらにひとつ上の技術、ベースの基盤ができれば、それに呼応して、さらに高度なサービスを考えて提供することができると思います。

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— 技術の進化とともに、利用する人々にとっても、新しいデバイスであるので
今後ガイドラインを作るとか、安全性を担保しながら楽しんでもらえるようにする
制度面の整備も必要ですね。

今はまだリーディングカンパニーが考えはじめているくらいだと思うのですが、新しい技術が出ると、やり過ぎとか中毒とか負の側面が出てくるので、提供者側全体でガイドラインが作られるべきです。例えばVRには一眼と、二眼のものがあるのですが、二眼だと成長期の目に影響を与える場合があるという医学的な見解もあります。
ですので、13歳未満の子どもには使わせてはいけません、とメーカーさんの方で明記している場合もあります。

それでも、一般のご家庭にあったら、子どもは使ってしまうかもしれないことをいまから想定しておくべきです。

しっかりとガイドラインや安全に楽しめる方法が確立されれば、どんどん良質なコンテンツやサービスが出てきて発展するのではないかと思いますし、さらに、私自身はHMDだけでなく、高い没入感がありつつ、大人も子どもも一緒に楽しめる3Dシアターのようなものが今後できるとよいなと思っています。

— 自社の技術であれば、VRを健全に発展させられるのではという見通しや予感があれば教えてください。

脳活動量をセンシングするデバイスなどは、このVR機器をはめる際にちょうど前頭葉近辺につけるものもあるので、上手く連携して使えないかなと考えたりします。
例えば、VRのどの場面を見てエキサイトしたか、何を見て緊張したか、怖いと感じたかがわかる。

— 現在スマートフォンや通信の在り方を劇的に変えるようなデバイス、サービスが一気に広がる気がします。

たとえば、特定の企業さまとコラボレーションして、その企業さまの会員、顧客基盤に対してドコモやNTTの技術アセットと組み合わせたサービスを提供していくということもいま取組んでいます。市場が飽和状態になるなかで新たな使い方やサービスを、使うべき人たちのために使う場も含めて提供していく。さらにそれを横に展開できるように考えながら作っていくというアプローチですね。

ドコモがVRの未来に描くビジョンとは

— 御社くらいのインフラやコネクションをお持ちのところでないとできないことなのでは。

ドコモにしかできないことをやっていくんだというのはおこがましい気がしますが、ゲームや、コミュニケーションサービスでお客さまの支持を集めている企業を、僕らが追いかけることも増えてきている。そのような競争のなかで、VRというのはひとつの良い例なんじゃないかなとも感じています。

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VRは将来、時間と空間を超越して
いろいろなことができる基盤になる。その時、
通信がないと絶対にできないことを実現していきたい。

— これから将来に向け、VRの分野でやっていきたいことや、
実現できたらいいなというビジョンがあれば教えてください。

将来的には、仮想世界を提供するというのはいろんな所に応用できるなと感じています。実写映像を見て今行けないところに行った気になるとか。CGで何万年前の古代の世界や、未来の想像の世界にタイムスリップしたり、時間と空間を超越していろんなことができる基盤になるんじゃないかと思っています。その中で通信会社としては、通信とVRの組み合わせで魅力的なサービスを実現したい。例えば北海道と九州の友達が、東京で開催される音楽ライブに、VRで一緒に行くというような世界が気軽に実現するというような。

現実にも素晴らしい世界を提供して、バーチャルな世界と現実を使いわける、お互いのいいとこ取りをするというのを通信を使って上手く実現できればなと思います。

Photos : Tadayuki Uemura
Interview & Text : DOCOMO R&D Magazine 編集部