pen_img_20160920_profile_sasaki_300x300

佐々木俊尚 Toshinao Sasaki
作家・ジャーナリスト
●1961年兵庫県生まれ。毎日新聞社会部記者として警視庁捜査一課、遊軍などを担当し、殺人事件や海外テロ、コンピュータ犯罪などを取材。その後、アスキーなどを経て現在はフリージャーナリストとして活躍。著書に「ライブドア資本論」、「グーグル Google 既存のビジネスを破壊する」などがある。

pen_img_20160920_profile_kinoshita_300x300

木下真吾 Shingo Kinoshita
NTTサービスエボリューション研究所 研究部長
●1968年和歌山県生まれ。NTT研究所にて情報処理研究に従事。2005年に情報処理学会研究開発奨励賞を受賞。ロンドンへ留学後、NTT北米研究所の設立などを担当。現在は2020エポックメイキングプロジェクトにて、2020年に向けた実証実験(羽田空港、東京駅、SXSW、ラスベガス歌舞伎など)を推進。

pen_img_20160920_profile_muramatsu_300x300

村松亮太郎 Ryotaro Muramatsu
アーティスト、ネイキッド代表
●1971年大阪府生まれ。TV/広告/MVなどジャンルを問わず活動。長編映画4作品を劇場公開、短編作品と合わせて国際映画祭で48ノミネート&受賞。おもな作品は、東京駅の3Dプロジェクションマッピング『TOKYO HIKARI VISION』など。

都市と生活者の関係に、変革をもたらす技術。

木下 我々の研究所では、新技術を使った感動の提供をテーマに研究開発をしています。たとえばパブリックビューイングの臨場感を高める技術「Kirari!」。空間そのものをリアルタイムに伝送しあたかもそこにいるかのような高い臨場感を伝えるための技術です。メインターゲットはスポーツの競技大会を、海外や地方で再現できないかということで進めています。

佐々木 現在あるパブリックビューイングとの見え方の違いは?

木下 人が立っている場所と背景が同じ平面上に映し出されている映像とは異なり、競技者がここにいるような感覚で見えます。リアルタイムに切り抜いた人物画像を特殊なスクリーンに投影し、人物が現実の空間に浮いているように見えるのです。あたかもそこにいるかのような、テレプレゼンスです。

村松 実際そこにあるかのような像をつくり出したいという欲求はどの方面にもあってさまざまな技術で試されていますが、その体感を提供する技術のひとつなんですね。伝送は一方的なので送って見せる話ですけれど、双方向的な考え方もできますよね?

木下 もちろんです。もともと狙っていたのはパブリックビューイングを単に見る人と映るものという関係だけでなく、空間全体で考えることでした。たとえばブラジルの観客と東京の私たち、さらに京都の観客がそこでお互いの映像が見えていて、応援がインタラクティブになるというようなことも、将来的には考えていきたいです。

佐々木 双方向になることでコンテンツの在り方も変わるかもしれません。

村松 僕がプロジェクションマッピングをやってみて面白いと思ったのは、東京駅が東京駅じゃないものに見えてくるとか、それが不思議な感覚でした。その映像を消せば普段の東京駅に戻る。あるいは展望台のガラスに特殊なフィルムを貼って映像を投影してみたら、夜景と一緒に見ることによって夜景に奇跡が起きるわけですよ。半分はリアルな夜景で、半分はバーチャルな映像です。どんどんその境目を曖昧にしたくなるんですよね。

佐々木 借景みたいなものですかね?

pen_img_20160920_02「FLOWERS by NAKED」は、村松亮太郎氏が総合演出・制作を手がけた生花と映像、空間演出が融合した体験型の庭園。自然界の神秘的な数列で表現された不思議な空間で、自然のもっている〝ゆらぎ〞た〝時間〞という本質的な美を五感で味わえる。

村松 限りなくそうですね。そうすると新体験として夜景に奇跡が起こって くる。Kirari!も感覚的には一緒ですね。プールにプロジェクションマッピングして、技術を合わせていけば水泳の競技大会で泳いでいるのと一緒に競争できるみたいなことができますよね。Kirari!に関しては、さらに伝送があるのが特殊なポイントになってくるのかなと。

木下 そうですね。伝送によって、単にリアルタイム性だけでなく、インタラクティブ性も加わり、ますます臨場感が高まると思います。究極の臨場感は、いったいどこを目指すのか。

佐々木 サッカーを見ていてディフェンダーになれてメッシと対決できる状態になれるとか、臨場体験に向かっていった先には、どこまでがバーチャルでどこまでがリアルかわからないところにいくのではないかと思います。

村松 プロジェクションマッピングは最近街に増えているし、僕は都市そのものがアートだと思っているから、都市の表情というのは文化そのものが見えて面白いなと思います。

木下 欧州の都市は100年前と雰囲気があまり変わらないけれど、日本の都市は技術の推進に応じて変化してきました。そういう意味でKirari!が街中に入るとすると、いまのデジタルサイネージの進化型と考えられるかもしれません。、日本はもともと技術による新しい変化を受け入れやすい環境があると思うので、そのため欧州の都市空間よりもKirari!は利用されやすい気がします。

佐々木 都市の考え方が最近急速に変わりつつあって、近代の集合住宅では扉を境に即プライベートだったのが、もう一度開かれる方向に進んでいますよね。シェアハウスの人々はリビングでイベントをやったり外から人を呼んでご飯を食べたりと、少しずつプライベートの領域と都市が融合しはじめている感じがしています。

次のページは境界が曖昧になる、デジタルとアナログについてのお話です。