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的場直人(まとば・なおと)
NTTドコモ イノベーション統括部
企業連携担当課長

1994年NTT入社。ワイヤレスシステム研究所にて無線による映像通信の研究に従事。1999年NTTドコモ転籍。ワイヤレス研究所、研究開発推進部、DOCOMO Eurolabs等で無線システムの研究開発や第4世代移動通信の国際標準化活動に従事。その後、2009年よりプロダクト部にて、端末ソフトウエアの導入、海外のオペレータやベンダと協力した新モバイルOSの立ち上げ、普及促進活動に従事。2015年よりイノベ―ション統括部にて、VR技術を利用したサービスを事業として立ち上げるべく、沖縄でのVR観光案内実験やリアルタイムVR伝送実験に取組み、ドコモの技術を活用したVRサービスについて模索している。

いま、最も注目を集めるVR(バーチャルリアリティ=仮想現実)技術。
映像や音、触感などを組み合わせ、自分がその場所にいるかのようなリアルな体験を実現するこの技術にとって、2016年はまさに“飛躍の年”。2020年までに約10倍規模の市場成長が見込まれるこの領域の先を読むべく、ドコモでもさまざまな取組みが進行中だ。
そのひとつが、3月に東京・豊洲の子ども向け職業体験型テーマパーク「キッザニア東京」で実施された「バーチャルリアリティ体験」。VRをはじめて体験し、驚きの表情や笑顔を見せる中学生たちの前に、果たしてどんな世界が広がっていくのか。
この試みを主導したNTTドコモ イノベーション統括部 企業連携担当の的場直人(まとば・なおと)担当課長に、話を聞いた。

中学生向けイベントで“はじめてのVR体験”を提供

— 先日行われたキッザニアでのイベント「ジュニアチャレンジジャパン」では、
中学生が実際にバーチャルリアリティ(VR)を体験していましたが
今回のイベントへのVR体験提供のきっかけは?

VR技術は去年から今年にかけて、盛んにニュースなどにも取り上げられるようになりはじめましたが、ただあくまでも限られた業界だけの現象で、一般の人にとっては、「VRって何ですか?」という状況です。そういったなかで、できるだけいろんな人に実際にVRを体感していただくことが必要だ、と考えていた時に、今回の話をいただいて、是非やらせてほしいとお願いしました。

— キッザニアでのイベントのような中学生向けの取組みをされるのは
はじめてでしたか?

そうですね。今回は特別に中学生のためのプログラムだったので、将来大人になった時にどんな世界になるのかをイメージさせて、それを自分の将来の仕事を考えるきっかけにするというコンセプトを事前にいただきました。
ドコモに対してはICT技術、それも中学生に未来を感じさせるような、新しいものが求められていたようで、VRはどうですか? という相談を受けました。

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仮想体験を提供するというのがまさにVRの定義
とするならばモバイルで使えるようになったことで
没入感や体験の広がる可能性がぐっと高まった

何をもってVRというのかは、定義がいろいろあると思います。
自分はこのHMD(ヘッドマウントディスプレイ)機器はあくまでも発展途上の製品だと思っていまして、古代の人たちから見たらテレビだってまさにVRですし。大画面化して3Dになって、4K、8Kになる延長線上にこれがある。この先にも次があると思いますね。
このHMDはインパクトを持った製品・技術であることは間違いないと思うんですけど、すべては、突然おこるのではなく、連続的に進んでいくものなのではないかと思います。

でも、CPUの高性能化と通信回線の高速化により、VRがモバイルで活用できるというところでは可能性がぐっと広がりました。
固定電話が携帯電話になったのと同じくらいの進化がある。体験できるのも、これまではケーブルにつながれていたものがワイヤレスになり、それでいて非常に没入感があったりということなので、これは世の中にインパクトを与えるサービスにつながるのではないかと思いました。

子どもたちの意外な反応とVR活用のアイデアとは

— ご自身のVRの展望として、技術で社会にインパクトを与えるだろう
というものはありますか。

仮想体験を提供するというのがまさにVRの定義だと思うのですが、今やっていてあまり面白くないものが楽しくなるというようなことが提供できるとよいなと思います。たとえば作業みたいになってきているネット上の買物が、バーチャルショッピングという形で提供され、リアルのショッピングよりもさらに上の体験ができ、選ぶ楽しさ、見比べる楽しさが体験できるとか。「エベレストに今登ってみたく」なったら、登れる。そういうわくわくするような体験を提供できると思います。

— VR を使うことで、新しい体験への障壁をなくすところもきっとありますね。

たとえば社員教育に応用できそうだという話をいただいたことがあります。安全は大事だという意識を作る際に、一回安全じゃない体験をさせる、ひやりとさせる(笑)。

「ああ、こんなこと絶対にしちゃだめだ」って本能に訴えかけて安全を確保するような動作をしていくなど、実際的な使い方もいろいろと言われています。

— 子どもたちは全くはじめて触れたと思うんですが、発見はありましたか。

一番びっくりしたのは、大人だったら10秒くらい見て「すごいね」「面白かったよ」で終わっちゃうんですけど、子どもは、「もう終わりだよ」って言うまでHMDにずっと頭をくっつけてじっと見ているのが印象的でした。与える大人は気をつけていかないといけないですね。

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子どもはもう終わりだよって言うまでHMDを
ずっとくっつけてじっと見ているのが印象的でした
与える大人は気をつけていかないといけない

— 子どもたちは体験後ドコモのコーナーで自分たちなりのVR活用のアイデアを書いていたようでしたが、ご覧になられていかがでしたか?

意外だったのは、お年寄りの方や、入院中で外に出られない方にバーチャル観光を体験させたい、スポーツができない方に競技者目線の試合を見せたい、学校に来られない友達も授業に参加できるようにしたい、などの意見が多かったことです。ゲームなど、自分がやりたいことを書くだけではなく、周りのいろいろな方をよく見ていて、優しい心を持っているんだなと感じました。

Photos : Tadayuki Uemura
Interview & Text : DOCOMO R&D Magazine編集部

「バーチャルリアリティ体験」@キッザニア東京

2016年3月12日、東京・豊洲の子ども向け職業体験型テーマパーク「キッザニア東京」にて、これからの時代を担う世代のために企業各社が特別プログラムを展開した中学生限定イベント「第2回 ジュニア チャレンジ ジャパン」の一環として開催。ドコモはVR体験イベントを行うとともに、キッザニア内の携帯電話ショップで感想や意見などを交えたワークショップを実施。
Galaxy S6を装着することでスマートフォンがHMD(ヘッドマウントディスプレイ)になる最新デバイス「Gear VR Innovator Edition for S6」が使用された。